タカラバイオ株式会社は、次世代型CAR遺伝子治療技術を用いたがん治療薬の共同開発をプリンセス・マーガレット・がんセンター(カナダ オンタリオ州 トロント市)のがん免疫研究部門部門長・上級主席研究員、トロント大学免疫学部教授 平野 直人 博士らと進めています。
このたび、CD19・JAK/STAT・CAR遺伝子治療(開発コード:TBI-2001)の第I/Ib相医師主導臨床試験の実施にあたり、カナダ保健省(Health Canada)に治験計画届(Clinical Trial Application)を提出し、カナダ保健省よりNo Objection Letter~{(注1)}を受領しました。これを受けて、同がんセンターで準備が整い次第、CD19陽性B細胞リンパ腫を対象としたTBI-2001の臨床試験を開始します。
CAR遺伝子治療は、治癒が難しい急性リンパ芽球性白血病や一部の悪性リンパ腫への非常に高い治療効果により、2017年にアメリカで最初の製品が薬事承認されました。日本でも複数の製品が上市されています。一方で、臨床応用が進むにつれてCAR-T細胞が生体内で長期生存しないこと等により、疾患が再発するという課題が明らかになってきています。
CAR遺伝子治療では、キメラ抗原受容体(CAR)~{(注2)}と言われるタンパク質の構造が治療対象のがん種や治療効果に大きく影響します。
TBI-2001は、CAR構造の治療効果に係る部位にT細胞(免疫細胞)の長期生存に重要なJAK/STATシグナル伝達系を活性化させる機能を新たに導入したものです~{(注3)}。この活性化部位を導入したCAR-T細胞は、前臨床試験において抗腫瘍応答を示すT細胞の増殖、分化を促進し、持続することにより、優れた抗腫瘍効果を示すことが報告されており~{(注3)}、CAR遺伝子治療で課題となっている治療効果の持続、再発の防止に役立つことが期待されます。
当社は、カナダUniversity Health NetworkとJAK/STATシグナル伝達技術に関する独占特許実施許諾契約を締結しており~{(注4)}、TBI-2001のターゲットをCD19とすることにより、従来のCD19 CAR遺伝子治療と比較することができ、これにより新たなJAK/STATシグナル伝達系を活性化させる機能の有用性を評価することができると考えています。JAK/STATの優位性を示すことができれば、CAR遺伝子治療の基盤技術として多様な事業展開が可能になると考えています。
当社は、遺伝子治療技術の社会実装化を通じて人々の健康に貢献してまいります。
(注1)規制当局がこの治験実施について異議が無いことを示した証明書
(注2)CARは、がん抗原を特異的に認識する抗体由来の抗体ドメインとT細胞受容体や共刺激分子等の細胞内シグナル伝達ドメインを遺伝子工学的に結合させて作製した、がん抗原を特異的に認識できる受容体です。多くのCAR遺伝子治療では、患者由来のT細胞にCAR遺伝子を体外で導入したCAR-T細胞を作製し、再び投与することにより治療を行います
(注3)Kagoya Y, Tanaka S, Guo T, et al. Nat Med., 24: 352-359, 2018
(注4)次世代型CAR遺伝子治療技術に係る特許の独占実施権を取得(2019年4月26日)
【本試験の概要】
| 治験課題名 | Phase I/Ib Study of TBI-2001 for Patients with Relapsed or Refractory CD19+ B-cell Lymphoma, Chronic Lymphocytic Leukemia (CLL), Small Lymphocytic Lymphoma (SLL) | 
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| 対象患者 | CD19陽性B細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)/ 小リンパ球性リンパ腫(SLL) | 
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| 主要目的 | TBI-2001の安全性、第Ⅱ相試験の推奨用量の決定 | 
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| 副次的目的 | 臨床効果(腫瘍縮小効果) | 
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| 目標症例数 | 19例 | 
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| 実施施設 | Princess Margaret Cancer Centre | 
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| 治験責任医師 | Marcus Butler, MD | 
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【プリンセス・マーガレット・がんセンターの概要】
| 名称 | Princess Margaret Cancer Centre | 
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| 設立 | 1952年 | 
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| 所在地 | Downtown Toronto, Toronto, Ontario, Canada | 
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| 概要 | カナダで最大の癌研究センター。トロント大学提携病院。 | 
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この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970
