タカラバイオ株式会社は、カナダUniversity Health Network_{注1}と次世代型CAR遺伝子治療技術_{注2}に関する特許実施許諾契約を2019年4月23日付で締結し、全世界を対象とする独占的実施権を取得しました。当社は今後、同特許の発明者であるプリンセスマーガレットがんセンター(カナダ オンタリオ州 トロント市)上級主席研究員・がん免疫療法部門副部門長、トロント大学免疫学部教授 平野直人 博士らのグループと共同して、特許技術を活用した新型CAR遺伝子治療の開発を進めます。
CAR遺伝子治療では、CAR(キメラ抗原受容体)_{注2}と言われるタンパク質の構造が、治療対象のがん種や治療効果に大きく影響します。今回、取得した特許技術は、CAR構造の治療効果に係る部位に、T細胞(免疫細胞)の長期生存に重要な、JAK/STATシグナル伝達系_{注3}を活性化させる機能を新たに導入したものです。当社と平野上級主席研究員らのグループの研究では、新たにこの活性化部位を導入したCARは、細胞を使った実験で、既存のCARと比較して、免疫細胞の増殖性、寿命を延長し、抗腫瘍効果に優れることが示されています*。
今後、両者は、この新規CAR遺伝子の治療技術の効果を細胞やモデル動物を使用して本格的に検証し、臨床応用を目指します。
当社はCAR遺伝子治療などのがん免疫遺伝子治療の技術開発、社会実装を通じ、未充足な医療ニーズの解決に取り組んでまいります。
*(参考文献) Nature medicine (2018) 24:352-359
独占実施権を得た特許技術
発明の名称 |
Chimeric antigen receptor comprising a cytoplasmic domain of an interleukin receptor chain |
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出願番号 |
US15/550,645 |
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【参考図】
【語句説明】
(注1)カナダUniversity Health Network
カナダトロント地区の医療機関(プリンセスマーガレットがんセンター、トロント総合病院、他)で組織された団体。医療、研究、教育などの業務に加え、特許等の知財管理を行う団体です。
(注2) CAR遺伝子治療、 CAR(キメラ抗原受容体)
CARは、がん抗原を特異的に認識する抗体由来の抗体ドメインとT細胞受容体の細胞内シグナル伝達ドメインを遺伝子工学的に結合させて作製した、がん抗原を特異的に認識できる受容体です。CAR遺伝子治療では、患者由来のT細胞にCAR遺伝子を体外で導入し、再び投与することにより治療を行います。
(注3)JAK/STATシグナル伝達系
細胞内で細胞の増殖や造血に関する情報(シグナル)の伝達を行うシステムの1つです。JAKと言われるリン酸化酵素(タンパク質)とSTATと言う転写因子(遺伝子の制御を行うタンパク質)が重要な役割を果たします。
この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970