タカラバイオ株式会社は、American Society of Clinical Oncology (米国臨床腫瘍学会) 2018 (本年6月1日~5日、米国イリノイ州シカゴ)において、米国で実施した腫瘍溶解性ウイルスHF10(一般名Canerpaturev, 略称 C-REV)の標記試験に関する最終結果を発表しますので、お知らせいたします。

【発表概要】

学会名

ASCO(American Society of Clinical Oncology) Annual Meeting 2018

場所

McCormick Place (米国イリノイ州シカゴ)

発表日時

6月4日(月) 午後1時15分~午後4時45分(現地時間)

演題名

Efficacy and Genetic Analysis for a Phase II Multicenter Trial of HF10, a Replication-competent HSV-1 Oncolytic Immunotherapy, and Ipilimumab Combination Treatment in Patients with Stage IIIB-IV Unresectable or Metastatic Melanoma

(ステージIIIB-IVの切除不能または転移性メラノーマ患者に対する腫瘍溶解性ウイルスHF10とイピリムマブとの併用療法の第II相臨床試験の有効性及び遺伝子解析結果の報告)

発表要旨

【被験者情報】
・46例が登録・投与され、そのうち20%がステージIIIB、43%がステージIIIC、37%がステージIVであった。
43%が既存治療無効例であった。
 
【安全性情報】
・用量制限毒性は観察されなかった。
 
【有効性について】(有効性評価可能症例:44例)
・24週最良総合効果(Overall Response):41%
・病勢コントロール率(Clinical Benefit):68%
・無増悪生存期間(中央値):19ヶ月、生存期間(中央値):26ヶ月(2018年2月時点)
・腫瘍浸潤リンパ球とCD8陽性T細胞の増加およびCD4陽性T細胞の減少など獲得免疫反応系を活性化することにより、イピリムマブと腫瘍溶解性ウイルスHF10の併用治療が抗腫瘍効果を示すデータを取得した。

ポスター資料

こちら

 

 当社はHF10(Canerpaturev)の臨床開発を国内外で推進しています。メラノーマに関しては、国内では第Ⅱ相臨床試験を実施しており、2018年の承認申請を目指しています。また、米国では、ユタ大学にて抗がん剤ニボルマブの併用による術前免疫療法の医師主導臨床試験を実施中です。

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

【語句説明】

腫瘍溶解性ウイルス
腫瘍溶解性ウイルスは、正常な細胞内ではほとんど増殖せず、がん細胞内において特異的に増殖するウイルス(制限増殖型ウイルス)です。増殖によって直接的にがん細胞を破壊し、さらにその際に放出されたウイルスが周囲のがん細胞に感染すること、また、破壊されたがん細胞の断片ががんに対する宿主の免疫を活性化することで、投与部位以外のがんも縮小することが期待されます。このようなウイルスは腫瘍溶解性ウイルス(oncolytic virus)と呼ばれています。
 

HF10 (Canerpaturev)
HF10は単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の弱毒化株で、がん局所に注入することによって顕著な抗腫瘍作用を示します。当社は、2016年12月に大塚製薬株式会社とHF10に関し国内共同開発および独占販売契約を締結しました。

なお、HF10の国際医薬品一般名は、WHO(国際保健機構)の審査を経て Canerpaturev に決定しました。
(参照)WHO Drug Information, Vol.32, No.1, 2018
 

メラノーマ (悪性黒色腫)
悪性度が非常に高い、皮膚に発生するがんの一種で、悪性黒色腫とも呼ばれています。皮膚の色と関係するメラニン色素を産生する皮膚の細胞をメラノサイトと呼び、メラノーマはこのメラノサイトあるいは母斑細胞(ほくろの細胞)が悪性化した腫瘍と考えられています。
 

イピリムマブ、ニボルマブ
がん細胞を攻撃する細胞傷害性T細胞(CTL)は、がん細胞を認識して攻撃する一方、自らの過剰な免疫応答への抑制機能をもち、抗腫瘍活性を示さない場合があります。イピリムマブ、ニボルムマブは、それぞれCTLが持つPD-1、CTLA-4という分子に結合し、この抑制機能を解除することで抗腫瘍活性を増強する医薬品(免疫チェックポイント阻害剤)です。