タカラバイオ株式会社は、117日から米国で開催されるAmerican Society of Clinical Oncology Gastrointestinal Cancers Symposium2019米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム2019ASCO-GI)において、日本国内で実施中の腫瘍溶解性ウイルスC-REV (一般名canerpaturev, 旧称 HF10(注1、2)の標記試験に関する中間結果を発表します。

【発表概要】

学会名

American Society of Clinical Oncology Gastrointestinal Cancers Symposium 2019 (ASCO-GI 2019)

開催場所

Moscone Center (米国カリフォルニア州サンフランシスコ)

発表日時

2019年1月18日(金)
①11時30分~13時00分 ②17時30分~18時30分  *現地時間

演題名

Results from Phase I study of the oncolytic viral immunotherapy agent canerpaturev (C-REV) in combination with Gemcitabine plus Nab-paclitaxel for Unresectable Pancreatic Cancer
(切除不能進行膵がんを対象としたゲムシタビン・ナブパクリタキセル(注3)併用下での腫瘍溶解性ウイルスC-REVの第I相臨床試験結果の報告)

発表要旨

【試験目的】
C-REV用量の検討を目的とした安全性および有効性評価


【被験者背景】
6例(日本人切除不能進行膵がん患者)が登録・投与され、そのうち2例がステージIII、4例がステージIVであった


【用法用量】
 ・C-REV腫瘍内投与(1x10sup{6} もしくは1x10sup{7} TCID50/mL(注4)を最大2mL超音波内視鏡ガイド下で2週毎に投与)+ゲムシタビン・ナブパクリタキセル静脈内投与(以下、G-nP治療;4週間を1サイクルとして1、8、15日目に1,000 mg/msup{2}ゲムシタビン+125 mg/msup{2} ナブパクリタキセルを繰り返し投与)
 ・最大1年間の継続投与


【安全性】
・1x10sup{7} TCID50/mLまでの容量範囲で、用量制限毒性(注5)は観察されなかった
・C-REVとの因果関係を否定できないグレード3以上の有害事象(急性すい炎)が1例(17%)に発現した
 ・G-nP治療との因果関係を否定できないグレード3以上の有害事象は、いずれもG-nP治療で報告されているもので、そのうち2例以上に発現した事象は好中球減少症(3例50%)であった


【有効性】(有効性評価可能症例:6例)
・最良総合効果(Best Overall Response): 67%(4/6例)
・病勢コントロール率(Disease Control Rate): 100%(6/6例)
                                *いずれも2018年9月1日時点


【まとめ】
C-REVの推奨用量は1x10sup{7} TCID50/mLであった

・日本人切除不能進行膵がん患者に対し、C-REVは一次治療の標準的な化学療法との併用で、良好な安全性と優れた抗腫瘍効果を示した

ポスター資料

こちら

 

 現在は、上記の第Ⅰ相臨床試験は拡大ステージに移行し、一次治療の標準療法(ゲムシタビン・ナブパクリタキセル)との併用群に加え、S-1(エス-ワン)(注6)という二次治療の標準治療を併用する群を2群追加し、投与部位も含めて複数の治療パターンによるC-REVの有効性および安全性のデータを並行して収集しています。

 

 当社はC-REVの商業化を目指し、国内外で臨床開発を行っています。メラノーマについては、国内で早期の承認申請を目指し準備を進め、米国では、抗がん剤ニボルマブ(注7)の併用による術前免疫療法の医師主導臨床試験を実施中です。

 

これまでの発表資料


「膵がんを対象とした腫瘍溶解性ウイルスHF10の国内第I相臨床試験治験計画届提出のお知らせ」

(2017年6月1日当社リリース)

http://ir.takarabio.co.jp/ja/news_all/news_Release/news8938199359078892040.html

 

「膵がんを対象とした腫瘍溶解性ウイルスHF10の国内第Ⅰ相臨床試験において第1例目の投与を開始」 (2017年9月27日当社リリース)

http://ir.takara-bio.co.jp/ja/news_all/news_Release/news8938199359078892028.html

 

【語句説明】

 

(注1) 腫瘍溶解性ウイルス (oncolytic virus)
腫瘍溶解性ウイルスは、正常な細胞内ではほとんど増殖せず、がん細胞内において特異的に増殖するウイルス(制限増殖型ウイルス)です。増殖によって直接的にがん細胞を破壊し、さらにその際に放出されたウイルスが周囲のがん細胞に感染すること、また、破壊されたがん細胞の断片が、がんに対する宿主の免疫を活性化することで、投与部位以外のがんも縮小することが期待されます。このようなウイルスは腫瘍溶解性ウイルスと呼ばれています。
 

(注2) C-REV 一般名canerpaturev, 旧称 HF10

C-REVは単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の弱毒化株で、がん局所に注入することによって顕著な抗腫瘍作用を示します。当社は、2016年12月に大塚製薬株式会社とC-REVに関し国内での共同開発および独占販売に係る契約を締結しました。

 

 (注3) ゲムタビン・ナブパクリタキセル

ゲムタビンとナブパクリタキセルは、膵がんに効果を示す化学療法薬剤で、これらの併用療法はG-nP療法もしくはジェムザール・アブラキサン療法とも呼ばれます。2014年に保険承認され、現在、進行膵がんに対する標準治療として用いられています

 

(注4) TCID50

培養した細胞の50%を感染させることができるウイルス量を表す単位です。

50% Tissue Culture Infectious Dosefの略です。

 

(注5) 用量制限毒性

一般に医薬品では投与量が増加すると毒性が増加しますが、患者がこれ以上耐えられなくなる際の毒性(副作用)のことを指します。

 

(注6) S(エス)-1(ワン)

膵がんの他に胃がん、肺がん、頭頸部がん、乳がん、結腸・直腸がん、胆道がんに対して効果を示します。抗がん剤として広く使用されています。

 

(注7) ニボルマブ

細胞傷害性T細胞(CTL)は、がん細胞を認識して攻撃しますが、その一方で、健康な細胞への攻撃を防ぐために備わっている抑制が働き、抗腫瘍活性を示さない場合があります。ニボルマブは、CTLが持つPD-1という分子に結合し、この抑制機能を解除することで抗腫瘍活性を増強する医薬品(免疫チェックポイント阻害剤)です。

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970