タカラバイオ株式会社は「RetroNectin~{®} GMP grade」(溶液タイプ)_{注1}が、2019年3月15日付で、米国食品医薬品局 (Food and Drug Administration: FDA) のドラッグマスターファイル (Drug Master File: DMF)_{注2}に登録されましたので、お知らせします。
最近注目されている、CAR遺伝子治療_{注3}などのがん免疫遺伝子治療_{注4}では、患者から採取したT細胞といわれる免疫細胞が、がんなどの異物を認識・攻撃する性質を利用します。治療では、T細胞にその機能を強化する目的で遺伝子を導入し、拡大培養の後に患者に投与(治療)します。その際、RetroNectin~{®}を用いると、効率よく大量の遺伝子導入細胞を作製することが可能です。RetroNectin~{®}は当社が開発し、がん免疫遺伝子治療薬の開発や製造を行う多くの企業や団体に提供しています。
このたび登録された本製品は、先行して登録済のRetroNectin~{®}(凍結乾燥タイプ;1995年登録)に次ぐものです。本製品は、医薬品や再生医療等製品の製造・品質管理基準(GMP/GCTP)_{注5}に準拠した当社施設(遺伝子・細胞プロセッシングセンター_{注6})で製造され、高い品質が担保されています。
当社は、がん免疫遺伝子治療などの再生医療の基礎研究や臨床応用に向けた研究・開発を支援する各種製品やサービスのラインアップ拡充を通じ、バイオ産業支援事業の拡大を目指しています。
【 FDA DMF 登録概要 】
登録名 |
RetroNectin~{®} GMP grade |
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登録日 |
2019年3月15日 |
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登録番号 |
DMF 18898 |
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【製品画像】
【ご購入・技術に関するお問い合わせ先】
営業企画部(TEL:077-565-6972)までお問い合わせください。
【語句説明】
(注1) RetroNectin~{®}(レトロネクチン~{®})
フィブロネクチンと呼ばれる細胞接着性タンパク質を改良した遺伝子組換えタンパク質で、ウイルスベクターなどによる細胞への遺伝子導入効率や、T細胞の増殖率を飛躍的に高めます。がん免疫遺伝子治療で使用される遺伝子導入細胞の作製にあたり汎用されています。レトロネクチン~{®}は当社の登録商標です。
(注2) ドラッグマスターファイル制度(DMF)
医薬品原料、医薬品添加物、包装材料などの品質に関する情報などを、あらかじめそれぞれの原料や材料メーカーなどが登録しておくことによって、最終製品を製造するメーカーが、個別の情報を入手することなく、審査当局への最終製品の申請が出来る制度です。
(注3) CAR遺伝子治療
CARはキメラ抗原受容体のことで、がん抗原を特異的に認識する抗体由来の部分とT細胞受容体由来の細胞障害性機能部分を結合させて作製された、がん抗原を特異的に認識できる受容体です。体外でT細胞にCAR遺伝子を導入、拡大培養して増殖させた後に、輸注によって患者に投与する治療をCAR遺伝子治療といいます。
(注4) がん免疫遺伝子治療
がん免疫治療の一種。がんを認識・攻撃する性質を持つ免疫細胞である患者のT細胞を体外に取り出し、がん細胞を認識・攻撃する指示を出す遺伝子を導入し、機能を強化したT細胞を作製し、拡大培養ののち投与する治療法です。CAR遺伝子治療、TCR遺伝子治療などが知られています。
(注5) GMP/ GCTP
GMPはGood Manufacturing Practiceの略で、医薬品を製造する際に遵守すべき「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準」を指します。GCTPはGood Gene, Cellular, and Tissue-based Products Manufacturing Practiceの略で、「再生医療等製品の製造所における製造管理及び品質管理の基準」を指します。
(注6) 遺伝子・細胞プロセッシングセンター
当社の遺伝子治療臨床開発プロジェクトの治験薬製造、CDMO事業の推進を目的として、2014年に、滋賀県草津市の本社地区に国内最大級の再生医療関連施設として稼働開始しました。3階建て、延床面積約6,500㎡。GMP/GCTPに準拠し、再生医療等安全性確保法(2014年11月施行)の特定細胞加工物製造許可やISO9001認証を取得しています。
この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970