タカラバイオ株式会社は、ウイルス安全性評価試験の受託サービスを日本国内で提供する神戸大学発のスタートアップ企業ViSpot株式会社(以下、ViSpot社)の子会社化に向け、同社の株式を保有するサンスター株式会社と2025年1月27日付で株式譲渡契約を締結しました(IRニュース)。
ウイルス安全性評価試験は、バイオ医薬品~{(注1)}が意図せぬウイルスに汚染されていないことを担保するために必須の試験です。製造工程におけるウイルスを除去する能力を評価する「ウイルスクリアランス試験」と、原材料や製品にウイルスが混入していないことを確認する「ウイルス否定試験」が含まれます(図1)。
図1:ウイルス安全性評価試験
(A)対象とする製造工程にウイルスを添加し、工程前後でウイルスを定量することでウイルス除去能力を評価する試験。
(B)原材料や最終製品を指標細胞に添加し、ウイルスが検出されないことでウイルスの混入を否定する試験。
ウイルスクリアランス試験およびウイルス否定試験は、特に、抗体医薬品の開発から上市までのプロセスにおいて必須の試験です(図2)。
図2:抗体医薬品の開発から上市までの流れ
ウイルス安全性評価試験を行う主要な受託試験機関のほとんどが海外に所在しているため、バイオ医薬品を開発する製薬企業は、ウイルスクリアランス試験実施のために開発スタッフを長期にわたって海外に滞在させたりする必要があり、多大な負担となっています。地理的距離の問題に加えて、海外の受託試験機関とのコミュニケーションを円滑に行うハードルは高く、スピード・コスト・利便性の面で、国内のバイオ医薬品開発における長年の課題となっています。
ViSpot社は、このような課題を解決できる数少ない機関の一つです。日本国内でウイルスクリアランス試験の受託を行う同社は、試験に用いる複数のモデルウイルスの取り扱い技術や、バイオセーフティレベル~{(注2)}基準に対応した専用の試験施設に加え、高度な専門知識と経験を有しており、国内のウイルス安全性評価試験のリーディングカンパニーとして、国内の主に抗体医薬品の開発に貢献しています。
当社は、再生・細胞医療・遺伝子治療薬を中心としたバイオ医薬品の国内最大級の製造施設である遺伝子・細胞プロセッシングセンターを活用し、開発・製造・品質試験について、開発初期フェーズから上市後までワンストップでサポートするCDMO事業~{(注3)}を推進しています。ViSpot社のウイルス安全性評価試験受託サービスを当社のCDMO事業に組み込み、さらに両社のノウハウを相互に活用することにより、新規品質試験メニューの開発加速や効率化、事業領域の拡大といったシナジー効果が期待できます。これにより、多様なモダリティに対応した品質試験メニューを拡充し、バイオ医薬品の開発・製造・品質試験に関するワンストップサービスをさらに強化し、CDMO事業の拡大を目指します。
なお、本件による今期の当社業績への影響は軽微です。
【ViSpot株式会社について】
名称 |
ViSpot株式会社 (バイスポット) |
本社所在地 |
兵庫県神戸市中央区港島南町6丁目3番5号 神戸医療イノベーションセンターKCMI |
代表者の役職・氏名 |
森 ゆうこ |
資本金 |
4,000万円 |
設立 |
2017年9月 |
事業内容 |
ウイルス安全性評価試験の受託 |
【サンスター株式会社について】
名称 |
サンスター株式会社 |
本社所在地 |
大阪府高槻市朝日町3番1号 |
代表者の役職・氏名 |
代表取締役 宮本 睦久 |
設立 |
1950年11月 |
事業内容 |
ハミガキ、ハブラシなどのオーラルケア製品を中心に、健康・美容関連製品を製造・販売 |
【語句説明】
(注1)バイオ医薬品
遺伝子組み換え技術や細胞培養技術等を応用した、哺乳動物やウイルスなどの生物によって生産される物質を用いた医薬品です。
(注2)バイオセーフティレベル
実験室・施設で取り扱う細菌・ウイルスなどの微生物・病原体等のリスクに応じて定められる安全対策基準です。
(注3)ワンストップサービス
当社は、遺伝子・細胞プロセッシングセンター(大規模 GMP/GCTP 対応施設)において、再生医療等製品に特化した各種セルバンク、DNA/RNA ワクチン、遺伝子治療用ウイルスベクターおよび細胞製剤を、GMP/GCTP に準拠して製造しています。また、同施設内で品質試験や特性解析を行うなど、日本国内最大規模の“ワンストップ GMP 製造サービス”を提供し、臨床開発から上市後の商用生産までトータルでサポートします。詳細はウェブページをご覧ください。
この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970
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