タカラバイオ株式会社は、小児の希少疾患領域に焦点を当てた遺伝子治療を手掛ける、イタリアの慈善団体であるFondazione Telethon ETS(以下、「Telethon」(テレソン))に対し、当社が保有するレトロネクチン®~{(注1)}の商業利用許諾とレトロネクチンの供給に関する契約を締結しました。

 

 レトロネクチン®は、当社が独自に開発した遺伝子組換えタンパク質です。ウィルスベクターを利用した細胞への遺伝子導入の際にレトロネクチン®を添加すると遺伝子導入効率を飛躍的に高め、遺伝子導入後の細胞の拡大培養を効率良く行うことができます。体外遺伝子治療の標準プロトコールとしても定評があり、現在、全世界で遺伝子治療の実臨床に多数採用されています。近年では、開発もしくは実用化の進んでいるCAR遺伝子治療やTCR遺伝子治療などの遺伝子改変T細胞療法、ならびに造血幹細胞遺伝子治療などの、細胞製剤の製造補助剤(Ancillary Material)として利用が増加しています。

 

 今回の契約に基づき、Telethonは同団体が製造販売承認の権利を保有する、小児の遺伝性希少疾患ADA-SCID(ADA欠損による重症複合免疫不全症)に対する遺伝子治療薬Strimvelis(ストリムべリス)~{(注2)}の製造において、レトロネクチン®を使用します。ADA-SCIDは、日和見感染など重篤化しやすい感染症を引き起こす免疫不全症で、生後2年以内に多くが死亡しますが、Strimvelisを投与した症例では、投与後3年経過しても生存が認められること、その後の追跡調査においても重度な感染症に罹患せず免疫機能が改善することが報告されています。

 

 当社は、遺伝子細胞療法の臨床開発を進める企業・団体に対して、レトロネクチン®の供給および商業利用ライセンス供与を促進し、遺伝子細胞治療分野における未充足な医療ニーズの解決に貢献します。

 

<Telethonの概要>

名称:Fondazione Telethon ETS (URL:https://www.telethon.it/en

所在地:Via Varese 16B, 00185 Roma Italy

設立年:1990年

事業内容:遺伝子細胞治療法等の臨床開発

 世界各地からの支援や研究資金を基に、ADA-SCIDをはじめウィスコット・オルドリッチ症候群などの免疫不全の希少疾患に対する遺伝子細胞治療分野で、複数の臨床開発を進めています。

 

 

【語句説明】

(注1)レトロネクチン®

レトロネクチン®は、ヒトフィブロネクチンと呼ばれる細胞接着性タンパク質を改良した組換えタンパク質です。レトロネクチン®を用いたウイルスの細胞への遺伝子導入法は、レトロネクチン®法として知られています。レトロネクチン®はタカラバイオ株式会社の登録商標です。
 

(注2)Strimvelis(ストリムべリス)

アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損による重症複合免疫不全症(SCID、以下ADA-SCID)の遺伝子治療で、欧州では2016年に欧州医薬品庁(European Medicines Agency:EMA)による承認を得ています。ADA-SCIDは世界の新生児20万人〜100万人に1人の割合で発症する、非常に稀な小児の先天性免疫不全症です。Strimvelisは、ADAの産生能力が欠損しているADA-SCID患者から採取した骨髄細胞に、正常なADA遺伝子を導入して増やした後に、再び患者に投与する、近年注目されつつある体外遺伝子治療法です。

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

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