タカラバイオ株式会社は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの大量製造に適した細胞培養用培地(以下、本培地)を開発しました。本培地は、血清などの動物由来原材料やタンパク質を含まない完全合成培地であり、臨床グレードのAAVベクターの大量製造に適しています。
AAVはヒトへの病原性が非常に低く、幅広い細胞種に感染するため、治療用遺伝子を搭載したAAVベクターは、安全かつ効果が高いウイルスベクターとして遺伝子治療に汎用されます。
一般に、臨床グレードAAVベクターの製造では、大量培養に適した浮遊培養~{(注1)}が行われます。本培地は、浮遊培養系の細胞培養に適しており、市販培地と比較し、高密度培養時の細胞生存率を高く維持できる特長があります。バイオリアクターを用いた浮遊培養系によるAAV2ベクター製造では、3×1013 vg/L以上の収量実績があります。また、AAV2以外の血清型~{(注2)}についても、市販培地と同程度の収量が得られることを確認しており、各種AAVベクター製造に適しています※。
本成果は、第29回日本遺伝子細胞治療学会学術集会(2023年9月11-13日、大阪国際会議場 演題番号O5-3)にて発表します。
当社CDMO事業では、AAVベクターの小規模な開発ステージ向けの製造から大規模な臨床グレードの製造受託サービス~{※}を提供しています。特に、大規模製造では、3,000リットルのバイオリアクターを整備するなど大規模製造向け施設整備を進めています。また、AAVproシリーズとして様々な研究用AAVベクター関連製品のラインナップを拡充しており、AAVベクターに関する研究開発から製造ステージまでトータルにサポートしています。
なお、本開発については、国立研究開発法人日本医療研究開発機構の遺伝子・細胞治療研究開発基盤事業、「遺伝子・細胞治療用ベクター新規大量製造技術開発」の支援を受けました。
※ 関連するニュースリリース・サービス・製品、語句説明
- 遺伝子治療用ベクターCereAAV™による網膜への高効率な遺伝子導入を確認
(2023年5月11日付 ニュースリリース)
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https://catalog.takara-bio.co.jp/product/basic_info.php?catcd=B1000467&subcatcd=B1000890&unitid=U100007828
(注1) 浮遊培養
細胞を培地中に浮遊した状態で増殖させる培養方法。
(注2) 血清型
AAVの血清型は、カプシド構造タンパク質の種類によって分類されています。その違いにより、種々の組織/細胞への感染指向性が異なることが知られています。
この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970