タカラバイオ株式会社は、先般、販売開始を発表した、新型コロナウイルスのオミクロン株に特徴的なE484A変異およびG339D変異を検出するPCR試薬(以下、オミクロン型検出試薬)~{(注1)}の出荷開始を予定より繰り上げ本年12月28日とします。
また、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を持つ疑似ウイルス~{(注2)}を遺伝子工学的に作製し、感染メカニズムやワクチンの効果などを研究する「Lenti-X SARS-CoV-2 Packaging Single Shots (Universal)」及び関連製品(以下、スパイクタンパク研究用試薬)を同じく12月28日より販売開始します。
◆オミクロン型検出試薬について
オミクロン型検出試薬については、販売開始の発表以来、数多くの発注や問い合わせをいただいております。当社では、最速で製造・出荷できるように努め、当初の2022年1月7日としていた出荷予定を早め、本年12月28日より出荷可能となりました。これにより、特に人の移動の多くなる年末年始のオミクロン株をはじめとした新型コロナウイルスのスクリーニング調査に貢献できるものと考えています。
◆スパイクタンパク研究用試薬について
新型コロナウイルスは、ウイルス表面のスパイクタンパク質が、ヒト細胞表面上のACE2受容体に結合して感染するとされています~{(注3)}。スパイクタンパク質の変異は、ウイルスの感染性やワクチンの効果に影響するため、その性質を解析することは極めて重要です。また、スパイクタンパク質は変異しやすいことから、今後も変異株が出現することが予想され、新たな変異株の出現に際して、スパイクタンパク質を迅速に解析できる研究用試薬の開発が望まれていました。
スパイクタンパク研究用試薬は、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を、レンチウイルスに組み込んだ疑似ウイルスを実験室で安全かつ簡便に作製することができ、疑似ウイルスは、スパイクタンパク質とヒト細胞受容体の結合を阻害する機能を有する抗体や化学物質の評価等に使用できます。
<製品の特長>
- 変異スパイクタンパク質を持つ疑似ウイルスを簡便に作製することが可能
- 疑似ウイルスに搭載する変異スパイクタンパク質はユーザーが自由に設計可能
- ヒトACE2受容体を発現するHEK293T細胞株「Human ACE2 293T Cell Line」との組合せで、ウイルス中和アッセイ~{(注4)}等の解析が可能
当社は、今後とも新型コロナウイルス研究製品や検査試薬等の提供を通じ、新型コロナウイルス感染症の対策に貢献してまいります。
【注意事項】
- 上記製品は、いずれも研究用です。ヒト、動物への医療、臨床診断用には使用しないようご注意ください。また、食品、化粧品、家庭用品等として使用しないでください。
- スパイクタンパク研究用試薬の使用は、遺伝子組換え実験になります。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を核酸供与体とした遺伝子組換え実験を行うときは、研究開発二種省令に従ってください。「研究開発等に係る遺伝子組換え生物等の第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置等を定める省令の規定に基づき認定宿主ベクター系等を定める件」(令和3年2月15日施行)が改正され、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は実験分類をクラス3として追加されました。
【製品概要】
オミクロン型検出試薬(2021年12月28日出荷開始)
製品名 |
容量 |
製品コード |
価格(税別) |
---|
Primer/Probe E484A (SARS-CoV-2) |
100回 |
RC322A |
10,000円 |
Primer/Probe G339D (SARS-CoV-2) |
100回 |
RC323A |
10,000円 |
Positive Control RNA Set (Omicron) |
各20㎕ |
RC379A |
25,000円 |
スパイクタンパク研究用試薬(2021年12月28日発売)
製品名 |
容量 |
製品コード |
価格(税別) |
---|
Lenti-X™ Packaging Single Shots (Envelope-Free) |
16回 |
631294 |
160,000円 |
Lenti-X™ SARS-CoV-2 Packaging Single Shots (Universal) |
16回 |
631295 |
190,000円 |
【製品のお問い合せ先】
テクニカルサポートラインまでお問い合わせください。
オンライン: https://www.takara-bio.co.jp/research/support/tsl/index.php
電話: 077-565-6999(平日9時-17時)
【語句説明】
(注1)
「新型コロナウイルスのオミクロン株に特徴的なE484A変異およびG339D変異を検出するPCR試薬(研究用試薬)を販売開始」(2021年12月15日)
https://ir.takara-bio.co.jp/ja/news_all/news_Release/newsr_21m1215Wsue8327yh3Ohj.html
(注2) 一部のウイルス粒子は、外殻にエンベロープと呼ばれている膜状の構造を有しています。疑似ウイルスは、自身のエンベロープのタンパク質の代わりに、遺伝子工学的手法を用いて他のウイルスのエンベロープタンパク質や特定のタンパク質を表面にもつように改変したウイルスです。本製品で作製された疑似ウイルスは、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質以外の部分は、安全性を高めるために自己複製能・増幅能を欠失したレンチウイルスをベースとしています。このようなレンチウイルスを用いた疑似ウイルスは、分子生物学的な研究や、中和抗体の測定、医薬品などの研究開発などで幅広く利用されています。
(注3) ACE2(Angiotensin-converting enzyme 2、アンジオテンシン変換酵素II)の生体内の受容体であるACE2受容体は、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質と結合し、新型コロナウイルスがヒト細胞に侵入・感染する際の受容体として知られています。(下図)
(注4) ウイルス中和アッセイ
ウイルス表面タンパク質(新型コロナウイルスのスパイクタンパク質)とヒト細胞受容体(ヒトACE2受容体)の結合により感染することを利用して、スパイクタンパク質とヒト細胞受容体の結合を阻害する機能を有する抗体や化学物質の評価を行うアッセイのことを言います。
この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970