タカラバイオ株式会社は、このたび、米国Tmunity Therapeutics, Inc.(以下Tmunity社)と、当社が保有する遺伝子治療に関する特許の非独占的な商業ライセンス契約(以下、本契約)を締結しました。

 

 今回、Tmunity社にライセンスした特許はsiTCR技術に関するもので、siRNAを用いてT細胞内在性のT細胞受容体(TCR)の発現量を減少させ、人為的に導入した治療用TCRの発現量を上昇させる技術に関するものです。本技術により、近年、開発が盛んながん免疫遺伝子治療分野で、高い抗腫瘍効果ならびに副作用のリスクが低い遺伝子改変T細胞の作製が可能になると期待されます。

 

 Tmunity社は、がん免疫遺伝子治療分野でTCR遺伝子治療やCAR遺伝子治療などの遺伝子治療の商業化を目指す米国のベンチャー企業です。本契約により、今後、同社の特定の遺伝子治療プロジェクトでsiTCR技術が使われる予定です。

 

 当社は、siTCR技術を利用した遺伝子治療の臨床開発を国内外で実施しており、国内では大塚製薬株式会社とNY-ESO-1・siTCR~{®}遺伝子治療薬(開発コードTBI-1301および1301A)の共同開発を行っています。当社は今後も、遺伝子治療の臨床開発を進める企業、機関に対し、siTCR技術のライセンスの導出を進め、遺伝子治療の開発・実用化を促進するとともに、未充足の医療ニーズの解決に取り組んでまいります。

 

 なお、本契約による2020年3月期の業績への影響は軽微です。

 

 

<参考資料>

 

【Tmunity社概要】

会 社 名 : Tmunity Therapeutics, Inc.
所 在 地 : 3020 Market Street, Suite 535, Philadelphia, PA 19104
設 立 年 : 2015年
事業内容 : 細胞・遺伝子治療等の研究開発
URL  : https://www.tmunity.com/

 

CAR遺伝子治療の開発者として著名なCarl June教授をはじめとするがん免疫分野な著名な研究者たちにより創立され、米国ペンシルバニア大学(University of Pennsylvania)、パーカーがん免疫研究所(Parker Institute for Cancer Immunotherapy)などとの共同研究を通じてがん免疫医療分野で、複数の臨床開発プロジェクトを進めています。

 

 

 

【語句説明】

 

siTCR技術

T細胞(免疫機能を司る細胞)が本来持っている内在性TCRの発現をsiRNAと呼ばれる短鎖RNAにより調節する技術です。これにより、T細胞が本来持つ内在性TCRを低減させ、導入した治療用TCRの発現が高くなり、治療有効性の向上、副作用リスクの低減につながると考えられます。

 

TCR(T細胞受容体)

T細胞の細胞表面に在るタンパク質です。T細胞ががん抗原などを認識する際に作用します。

 

TCR遺伝子治療

体外でT細胞にTCR遺伝子を導入し、そのT細胞を培養して増殖させた後に輸注によって患者に投与する治療をTCR遺伝子治療といいます。TCR遺伝子が導入されたT細胞ががん細胞を特異的に認識して攻撃し、消滅させることによりがんを治療します。

 

遺伝子改変T細胞

T細胞に治療用遺伝子を導入した細胞のことです。遺伝子を導入した細胞を体内に輸注などにより投与することで治療を行います。

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970