タカラバイオ株式会社は、欧州臨床腫瘍学会2018年総会 (ESMO2018)にて、国内で実施中の腫瘍溶解性ウイルスC-REV(一般名canerpaturev, 旧称 HF10)(注1、2)の標記試験に関する主要結果を発表します。

【発表概要】

学会名

ESMO Annual Meeting 2018

(2018年10月19日~23日開催)

開催場所

Messe Munich (ドイツ・ミュンヘン)

発表日時

10月21日(日)12時45分~13時45分 (現地時間)

演題

Topline Results from Phase II of Combination Treatment with canerpaturev (HF10), an Oncolytic Viral Immunotherapy, and Ipilimumab in Patients with Unresectable or Metastatic Melanoma after Anti-PD-1 Therapy

(抗PD-1抗体(注3)療法に難治あるいは治療後に再発した切除不能または転移性メラノーマ(注4)患者に対する腫瘍溶解性ウイルスC-REVとイピリムマブ(注5)との併用療法の第II相臨床試験の主要結果)

 

⇒ ポスター資料は こちら (10/29追加掲載)

 

発表要旨

【被験者背景】

  • 28例(日本人メラノーマ患者)が登録・投与され、そのうち7%がステージIIIB、29%がステージIIIC、64%がステージIVであった。
  • 39%が末端黒子型黒色腫、21%が粘膜部黒色腫であった。
  • 全例が何らかの前治療を受けており、そのうち89%が抗PD-1抗体単剤による治療例であった。

 

【用法用量】

  • C-REV腫瘍内投与(1x10sup{7}  TCIDsub{50}/mL(注6)、1週毎に計4回、その後3週間毎に最大15回)+イピリムマブ静脈内投与(3 mg/kg、3週毎に計4回)


【安全性】

  •  C-REVとの因果関係を否定できないグレード3以上の有害事象は12%の患者において発現した。

 

【有効性】(有効性評価可能症例:27例)

   24週最良総合効果(Best Overall Response):7%

   病勢コントロール率(Clinical Benefit):56%

 

【まとめ】

抗PD-1抗体を含む既存治療が無効又は再発の日本人メラノーマ患者において、C-REVとイピリムマブ併用療法は良好な治療成績であった。この結果から、本併用療法はメラノーマ二次治療の新たな治療選択肢になりえる。

 

*参考文献(イピリムマブ単剤による二次治療に関する文献

  • Fujisawa Y et al. Retrospective study of advanced melanoma patients treated with ipilimumab after nivolumab: Analysis of 60 Japanese patients. Journal of Dermatological Science, January 2018, 89 (1):60-66.
  • Sato M, et al. Efficacy and toxicity of ipilimumab used after nivolumab in patients with melanoma. Journal of Dermatology, April 2018, doi: 10.1111/1346-8138.14325.

 

 

 当社はC-REVの商業化を目指し、国内外で臨床開発を行っています。メラノーマについては、国内での早期承認申請を目指しています。また、米国では、ユタ大学にて抗がん剤ニボルマブ(注5)の併用による術前免疫療法の医師主導臨床試験を実施中です。この他、膵がんを対象とした第Ⅰ相臨床試験を国内で実施しており、当該試験の中間結果は、2019年の早い時期に学会等での発表を計画しています。

 

<参考資料>

【語句説明】

(注1) 腫瘍溶解性ウイルス
腫瘍溶解性ウイルスは、正常な細胞内ではほとんど増殖せず、がん細胞内において特異的に増殖するウイルス(制限増殖型ウイルス)です。増殖によって直接的にがん細胞を破壊し、さらにその際に放出されたウイルスが周囲のがん細胞に感染すること、また、破壊されたがん細胞の断片ががんに対する宿主の免疫を活性化することで、投与部位以外のがんも縮小することが期待されます。このようなウイルスは腫瘍溶解性ウイルス(oncolytic virus)と呼ばれています。
 

(注2) C-REV一般名canerpaturev, 旧称 HF10

C-REVは単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の弱毒化株で、がん局所に注入することによって顕著な抗腫瘍作用を示します。当社は、2016年12月に大塚製薬株式会社とC-REVに関し国内での共同開発および独占販売に係る契約を締結しました。なお、国際医薬品一般名は、WHO(国際保健機構)の審査を経て、canerpaturev(略称C-REV)に決定しました。

(参照)WHO Drug Information, Vol.32, No.1, 2018

 

(注3) 抗PD-1抗体

がん細胞を攻撃する細胞傷害性T細胞(CTL)上に発現するPD-1Programmed cell death 1)という分子を特異的に認識する抗体で、免疫チェックポイント阻害剤の1種として知られています。

 

(注4) メラノーマ

皮膚に発生する悪性度が非常に高いがんの一種で、悪性黒色腫とも呼ばれています。皮膚の色と関係するメラニン色素を産生する皮膚の細胞をメラノサイトと呼び、メラノーマはこのメラノサイトあるいは母斑細胞(ほくろの細胞)が悪性化した腫瘍と考えられています。メラノーマの病型は、末端黒子型黒色腫、表在拡大型黒色腫、結節型黒色腫、悪性黒子型黒色腫の4種類に大きく分類されるほか、粘膜などに発症する粘膜部黒色腫に分類されることもあります。

 

(注5) イピリムマブ、ニボルマブ

CTLは、がん細胞を認識して攻撃しますが、その一方で、健康な細胞への攻撃を防ぐために備わっている抑制が働き、抗腫瘍活性を示さない場合があります。イピリムマブ、ニボルムマブは、それぞれCTLが持つCTLA-4PD-1という分子に結合し、この抑制機能を解除することで抗腫瘍活性を増強する医薬品(免疫チェックポイント阻害剤)です。

 

(注6) TCIDsub{50}

培養した細胞の50%を感染させることができるウイルス量を表す単位です。50% Tissue Culture Infectious Doseを略してTCIDsub{50}と呼びます。

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970