タカラバイオグループは、近年注目が集まっているCRISPR/Cas9システムによるゲノム編集製品「Guide-it™ CRISPR/Cas9 Gesicle Production System」を、本日より全世界で販売開始いたします。
 
ゲノム編集は標的遺伝子を人工的に改変する遺伝子操作技術の一つで、近年は基礎研究分野だけでなく医療や農業などの応用研究分野においても広く利用が進んでいます。中でもCRISPR/Cas9システムによるゲノム編集は、いくつかあるゲノム編集の中でも、操作が簡便で改変効率に優れるため急速に普及しています。このシステムでは、ガイドRNAと呼ばれる小型RNAがCas9タンパク質と呼ばれる核酸分解酵素を標的遺伝子に導き、標的遺伝子が切断され、遺伝子改変が起こります。本製品では、Gesicleという細胞膜由来の小胞からなる「運び屋」がCas9タンパク質とガイドRNAを内包して細胞内へ輸送してゲノム編集を行うことから、下記の優れた効果が期待できます。
 

  • 細胞内に高効率にCas9タンパク質およびガイドRNAが輸送されるため、ゲノム編集の効率が向上する。
  • Gesicleを使用するため、幅広い細胞種への輸送が可能で、プラスミドやウイルスベクターなど他の「運び屋」では輸送が困難な細胞に対しても効果的にゲノム編集が可能である。
  • Cas9タンパク質を直接細胞内へ輸送するため、これまで一般的に利用されているCas9遺伝子の発現を利用するゲノム編集に比べて、細胞内でのCas9タンパク質の滞留時間が短くなり、標的としない遺伝子に意図せずゲノム編集が起きるリスク(オフターゲットリスク)が少ない。

当社グループは、今後大きな成長が見込めるゲノム編集分野の製品・サービスの開発に注力して製品・サービスのラインナップ充実を図り、売上拡大を目指してまいります。

 

【製品概要】

 

製品名 容量 製品コード 希望小売価格
(税別)
Guide-it™ CRISPR/Cas9 Gesicle Production System 1 system 632613 150,000円

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【語句説明】

 

ゲノム編集

人工核酸分解酵素を用いたゲノムDNA上の標的遺伝子改変技術をゲノム編集と言います。細胞内で人工核酸分解酵素を用いて標的遺伝子のDNAを切断し、それを細胞自身が修復しようとする働きを利用して標的遺伝子を改変します。Zinc-Finger Nucleases(ZFNs)やTranscription Activator-like Effector Nucleases(TALENs)といった人工核酸分解酵素を利用したゲノム編集技術が広く普及しており、近年、CRISPR/Cas9システムによるゲノム編集技術が新しく開発されました。ゲノム編集は動物、植物、培養細胞などの遺伝子改変が可能なため、遺伝子の機能解析などの研究や医薬品への応用など幅広く利用されています。
 

CRISPR/Cas9システム

RNAとタンパク質の複合体からなる人工的に作製された核酸分解酵素を用いたゲノム編集技術です。本システムのRNA誘導型核酸分解酵素は、Cas9と呼ばれる核酸分解酵素が、ガイドRNAと呼ばれるRNA分子を介して、これと相補的な塩基配列を有するゲノム配列に誘導されることで、その位置を標的として配列特異的にゲノムDNAの切断が行われます。このシステムの利点としては、DNAを切断したい箇所が複数ある場合でも同時に複数のガイドRNAを細胞内に輸送することで、一度に切断することが可能なことです。
 

Gesicle

パッケージング細胞と呼ばれる特定の細胞から放出される小胞で、目的タンパク質やタンパク質に結合した核酸を小胞の内膜に結合し効果的に内包することが可能です。Gesicleは、小胞の機能の1つである物質の輸送機能を利用して、細胞内へタンパク質を効果的に輸送します。
 

小胞

細胞から分泌される細胞内の膜で包まれた袋で、細胞内外の物質の輸送や貯蔵などに関わっています。