タカラバイオ株式会社は、株式会社IDファーマ(以下「IDファーマ社」)と、同社のセンダイウイルスベクターを用いたiPS細胞作製技術に関する実施許諾契約を本日付で締結しました。当社は、本契約に基づき、IDファーマ社のセンダイウイルスベクターによるiPS細胞誘導キット「CytoTune®-iPS」を用いて研究用iPS細胞等の受託製造を行うこと、及び同キットを用いて作製した研究用iPS細胞並びに分化細胞の開発・製造・販売を行うことに関する全世界における非独占的実施権を取得します。
 
iPS細胞の作製においては、京都大学の山中教授らのグループが発見した遺伝子(山中因子)を細胞へ導入する必要があります。この細胞へ遺伝子を導入する方法として、レトロウイルスベクターやプラスミドベクターなどを使用する方法が知られています。この中で、センダイウイルスベクターを用いる方法は、細胞の染色体への遺伝子挿入がないことから、癌化しにくいiPS細胞作製法の一つとして利用されています。
 
当社グループは、すでにiPSアカデミアジャパン株式会社よりiPS細胞の作製に関する特許実施許諾を受け、iPS細胞及びiPS細胞由来分化細胞の作製に関するビジネスを行っております。今回、本技術の実施許諾を受けることで、付加価値の高い製品・サービスを拡充させます。
今後、センダイウイルスベクターによるiPS細胞作製サービスを展開するとともに、本技術を利用したiPS細胞や分化細胞の新製品開発を進める予定です。
 
当社グループは、近年ニーズが高まっている幹細胞分野の製品やサービスを拡充するとともに、幅広いニーズに応えられる製品・サービスを展開し、業績を拡大させてまいります。

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【株式会社IDファーマの概要】

 

会社名 株式会社IDファーマ
設立 平成15年9月5日
代表者 代表取締役会長 森 豊隆
住所 茨城県つくば市大久保6番(テクノパーク大穂)
会社概要 株式会社アイロムグループの先端医療事業を担う子会社で、以下の事業を行っています。
・細胞治療・再生医療事業
・遺伝子創薬事業
ホームページ http://www.dnavec.co.jp/jp/index.html

 
 

【語句説明】

 

ベクター

目的遺伝子をバクテリアや細胞に導入するための分子。プラスミドベクターやウイルスベクター等があります。
 

センダイウイルスベクター

マウスやラットを自然宿主とする呼吸器病ウイルスで、1本のマイナス鎖RNAをゲノムに持つウイルスです。染色体がある細胞核には入らず、細胞質で複製します。このため、センダイウイルスを由来としたベクターは宿主細胞の染色体に影響を与えない遺伝子導入法として利用されています。
 

レトロウイルスベクター

レトロウイルスとは、一本鎖RNAをゲノムとするウイルスの一種で、このウイルスが感染した細胞では、RNAゲノムから合成されたDNAが染色体に組み込まれます。その仕組みを利用して、レトロウイルスを改変したものが、遺伝子治療の際の遺伝子導入用ベクターとして広く用いられています。このベクターを使用して種々の細胞に遺伝子導入を行うことができ、安定した形質発現が期待できます。
 

プラスミドベクター

プラスミドとは、染色体DNA以外の細胞質DNAの名称です。環状の二本鎖構造をとるDNAで、細胞内で核以外の細胞質中に存在し、染色体とは独立して自律的に増殖し、親から子の細胞へ伝えられます。このため、プラスミドベクターは、宿主細胞の染色体に影響を与えない遺伝子導入法として利用されています。
 

iPS細胞

体細胞に、数種類の遺伝子を導入することなどによって分化多能性が誘導された細胞のことです。2006年に京都大学山中伸弥教授らのグループにより、この現象が発見され人工多能性幹細胞(induced Pluripotent Stem Cells :iPS細胞)と名付けられました。iPS細胞は、ES細胞とほぼ同等の分化多能性を示すことから、薬剤開発、種々の疾患の病態解明や再生医療への応用が期待されています。
 

分化細胞

受精卵から細胞分裂を繰り返したのちに、心臓、肝臓、神経など特定の機能や形態を有する細胞へ分化した細胞のことをいいます。
 

幹細胞

他の種類の細胞へ分化できる能力と分裂増殖を経ても未分化な細胞を維持できる自己複製能を有する細胞のことをいいます。中でも多種類の細胞へ分化することができる幹細胞を多能性幹細胞といい、再生医療への応用が期待されているES細胞やiPS細胞などが含まれます。