タカラバイオ株式会社の推進する遺伝子医療の中核技術の1つである「レトロネクチン®拡大培養法」に関する特許出願が、米国特許商標庁により特許査定を受けましたのでお知らせします。

 

本特許は、レトロネクチン®を用いてTリンパ球を体外で増殖・活性化する技術に関するものです。本技術により効率よくリンパ球の培養を行うことが可能で、増殖した細胞中にはナイーブT細胞と呼ばれるがん治療効果の高い細胞が多く含まれるのが本培養法の特徴です。このことから、本技術はTリンパ球を用いるがん免疫細胞治療での利用が期待されます。

 

当社では、今回の米国での特許登録により、本技術ならびに、当社のレトロネクチン®に関する技術が普及し、がん免疫細胞治療や遺伝子治療を実施している医療機関、企業に対し技術導出やレトロネクチン®製品の販売が促進されることを期待しております。


 

【今回成立した特許について】
 

特許名 Process for producing cytotoxic lymphocyte
登録番号 US8728811
特許登録日/満了日 2014年5月20日/2026年2月27日
他国での成立状況 日本、ドイツ、イギリス、フランス、中国など12か国

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【語句説明】

 

レトロネクチン®

レトロネクチン®は、ヒトフィブロネクチンと呼ばれる分子を改良した組換えタンパク質です。レトロネクチン®を用いたレトロウイルスベクターによる遺伝子導入法は、レトロネクチン法として知られており、レトロウイルスベクターによる遺伝子治療の臨床研究のスタンダードとなっています。さらに、当社はレトロネクチン®の新たな機能として、リンパ球の培養を増強する効果を発見し、レトロネクチン®の臨床応用を進めています。

 

レトロネクチン®拡大培養法

レトロネクチン®の存在下にてリンパ球を培養し増殖させる培養法のこと。当社は、レトロネクチン®拡大培養法によって効率よくリンパ球を増殖させることができ、また、得られる細胞集団にナイーブT細胞が多く含まれていることを確認しています。

 

ナイーブT細胞

特異的な抗原により刺激を受け活性化されたことがない未分化T細胞で、血液中を循環し、2次リンパ組織において抗原提示細胞により抗原の提示を受け、細胞傷害性T細胞やヘルパーT細胞などに分化する能力を有しているとされています。

 

がん免疫細胞療法

がん免疫細胞療法は、患者自身のリンパ球を、自身のがん細胞を攻撃できるように体外で活性化し、その細胞数を増やしてから、患者の体内に再び戻し、がん細胞を破壊に導くというものです。外科手術、放射線治療、化学療法などと比較して、一般的に副作用が少ないと言われています。