タカラバイオ株式会社とCellectis SA社(本社:フランス、以下「Cellectis社」)は、この度、当社が保有するレトロネクチン®に関する特許を同社が商業利用し、当社がレトロネクチン®製品を同社に安定的に供給・販売する契約を締結いたしました。これにより、レトロネクチン®に関する特許の商業利用のライセンス先は9社になりました。
 
本契約でライセンスした特許技術は、レトロネクチン®を用いる遺伝子導入法(以下「レトロネクチン®法」)を基にした技術で、レトロウイルスベクターなどによる細胞への遺伝子導入の効率を飛躍的に高めることができる技術を含みます。レトロネクチン®法は、近年、実用化への期待が高まっているTCR遺伝子治療やCAR遺伝子治療などのEngineered T-cell Therapy(分子標的T細胞療法)において、その優れた遺伝子導入効率から世界の標準プロトコールとして広く利用されつつあります。
 
Cellectis社は、独自のゲノム編集技術TALEN®を活用し、患者以外の健常人から提供されるTリンパ球を用いたCAR遺伝子治療の臨床開発を進めており、本臨床開発にレトロネクチン®法が使われる予定です。
 
当社は、拡大しているEngineered T-cell Therapyの臨床開発に対して、レトロネクチン®の提供を促進し、売上拡大につなげてまいります。

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【語句説明】

 

レトロネクチン®

レトロネクチン®は、ヒトフィブロネクチンと呼ばれる分子を改良した組換えタンパク質です。レトロネクチン®を用いたレトロウイルスベクターによる細胞への遺伝子導入法は、レトロネクチン®法として知られています。
 

レトロウイルスベクター

レトロウイルスとは、一本鎖RNAをゲノムとするウイルスの一種で、このウイルスが感染した細胞では、RNAゲノムから合成されたDNAが染色体に組み込まれます。その仕組みを利用して、レトロウイルスを改変させたものが、遺伝子治療の際の遺伝子導入用ベクター(ウイルスベクター)として広く用いられます。
 

TCR遺伝子治療

TCRはT細胞に発現する糖タンパク質のことで、T細胞が抗原を認識する際に作用します。体外でT細胞にTCR遺伝子を導入し、そのT細胞を培養して増殖させた後に輸注によって患者に投与する治療をTCR遺伝子治療といいます。Engineerd T-cell Therapyの一種です。TCR遺伝子が導入されたT細胞が癌細胞を特異的に認識して攻撃し、消滅させることにより癌を治療します。
 

CAR遺伝子治療

CARはキメラ抗原受容体のことで、ある癌抗原を特異的に認識する抗体由来の部分とT細胞受容体由来の細胞障害性機能部分を結合させて作製された、癌抗原を特異的に認識できる受容体です。体外でT細胞にCAR遺伝子を導入し、そのT細胞を培養して増殖させた後に輸注によって患者に投与する治療をCAR遺伝子治療といいます。Engineerd T-cell Therapyの一種です。CAR遺伝子が導入されたT細胞が癌細胞を特異的に認識して攻撃し、消滅させることにより癌を治療します。
 

Engineered T-cell Therapy(分子標的T細胞療法)

T細胞に遺伝子を導入し、ターゲットとする癌細胞などを選択的に認識して攻撃させ、治療する方法をいいます。