タカラバイオ株式会社は、株式会社chromocenter(クロモセンター社)が保有する人工染色体技術に関して、特許の実施許諾を受けるためのライセンス契約を本年2月20日付で締結しました。これにより、本契約に基づき開発する研究用遺伝子導入試薬※を全世界において販売するための権利を、クロモセンター社以外には当社のみが保有することになります。

今回ライセンスを受ける人工染色体技術は遺伝子導入手法に関する技術で、鳥取大学大学院医学系研究科に所属する押村光雄教授らのグループが開発し、クロモセンター社が関連知財を保有しています。人工染色体技術は、ゲノム編集技術などと並んで、iPS細胞の作製や再生医療分野など、ライフサイエンスや医療の分野での応用が可能な重要技術として注目されています。そのため、導入できる遺伝子サイズが大きいことや、導入遺伝子が安定的に発現可能という、既存ベクターにない有利な特徴を持った人工染色体技術は、創薬研究用の遺伝子安定発現細胞やタンパク質高生産細胞株の作製など、ライフサイエンス分野における有用なツールとなると期待されます。

当社は、これまでに培ってきたウイルスベクター製品の開発、製造経験を活かし、平成26年度中に人工染色体技術を利用した製品や受託サービスを開発することを目指します。また、当社が保有するゲノム編集技術や細胞加工技術などと組み合わせ、より高機能・高付加価値に加工した細胞を提供することにより、当社が注力する創薬支援事業や再生医療分野における業績の拡大を目指してまいります。

(※)人工染色体に任意の遺伝子を搭載し、目的の哺乳類細胞へ導入するための研究用試薬

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【クロモセンター社の概要】

 

会社名 株式会社chromocenter
所在地 鳥取県米子市西町133-2

 

創業 2005年
代表者 松岡 隆之
事業内容 安定遺伝子発現細胞株の構築、タンパク質高生産系の開発、ヒト型薬物代謝モデル動物の開発、ヒト型薬物代謝モデル動物を用いた受託試験、ノックアウト・ノックインマウスの開発、染色体解析サービス

 

 

【語句説明】

 

人工染色体

染色体は、細胞の核内に存在する、遺伝情報の保持、発現を担う物質で、主にDNAとヒストンと呼ばれるタンパク質を構成要素としています。ヒトの場合、細胞の核内に23組、46本の染色体が存在しています。人工染色体は、ヒトあるいはマウス染色体から不要な遺伝子を除去して開発されたもので、染色体としての性質を引き継いでいるため、搭載できる遺伝子サイズが大きいこと、また細胞株内で宿主染色体と独立して保持されることから安定的な遺伝子発現細胞株が作製しやすいことなど、既存技術であるプラスミドやウイルスベクターにはない特徴を有しており、ライフサイエンスや医療への応用が期待されています。

 

ベクター

目的遺伝子を細胞やバクテリアに導入するための分子。プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターなどがあります。

 

ゲノム編集

人工核酸分解酵素を用いたゲノムDNA上の標的遺伝子改変技術をゲノム編集といいます。細胞内で人工核酸分解酵素を用いて標的遺伝子のDNAを切断し、それを細胞自身が修復しようとする働きを利用して標的遺伝子を改変します。