タカラバイオ株式会社と自治医科大学附属病院は、悪性リンパ腫の一種である非ホジキンリンパ腫(NHL)のうち、B細胞ががん化したB-NHLを対象に、CD19抗原特異的キメラ抗原受容体(CAR; Chimeric Antigen Receptor)遺伝子治療の臨床研究を実施しておりますが、7月13日に第1例目の被験者へ遺伝子導入細胞の投与が行われました。本投与が日本で初めてのCAR遺伝子治療となります。
CAR遺伝子治療は、海外では臨床試験が多数実施されており、将来有望な新規治療法として注目されています。当社は、CAR遺伝子治療をsiTCR遺伝子治療と並ぶ分子標的T細胞療法として、がん免疫遺伝子治療の開発候補の一つと位置付けており、本臨床研究を推進するとともに、平成27年度中の治験開始に向けて準備を進めております。
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<参考資料>
【語句説明】
キメラ抗原受容体(CAR)
CARは、がん抗原(がん細胞に発現している抗原)を特異的に認識する抗体由来の部分と、T細胞受容体由来の細胞障害性機能部分を結合させて作製された、がん抗原を特異的に認識できる受容体です。T細胞受容体と異なり、CARはヒト白血球抗原(HLA)の型に制限されることなくがん抗原を認識することができるため、がん細胞でCD19を発現している患者はHLAの型に関係なく治療の対象となります。
非ホジキンリンパ腫(NHL)
ヒトの免疫システムを構成するリンパ系組織から発生する腫瘍である悪性リンパ腫は、その形態学的特徴から、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫(NHL)に分類されます。日本人の場合、悪性リンパ腫のうち約90%がNHLです。首や脇の下、足のつけ根などのリンパ節が腫れ、しこりになるといった症状が現れます。国内の患者数は近年増加傾向にあり、国立がん研究センターがん対策情報センターのがん統計予測によると、2014年には約27,900人が新たに悪性リンパ腫と診断されると予測されています。NHLのうち、約70%がB細胞性です。
CD19
B細胞の表面に存在する糖蛋白で、B細胞の活性化や増殖に関与しています。また、非ホジキンリンパ腫以外でも慢性リンパ性白血病や急性リンパ性白血病などの造血器悪性腫瘍の多くは、B細胞の系列に発生し、これらの悪性化B細胞の表面にもCD19分子が発現しています。
siTCR遺伝子治療
がん患者から採取したT細胞に、がん細胞を特異的に認識するTCR遺伝子を体外で導入し、培養によって増殖させた後に輸注により患者に戻す治療をTCR遺伝子治療といいます。TCR遺伝子が導入されたT細胞が、患者の体内においてがん細胞を特異的に認識して攻撃し、消滅させることによりがんを治療します。当社では、siTCRベクター技術を用いたTCR遺伝子治療をsiTCR遺伝子治療と呼んでいます。MAGE-A4およびNY-ESO-1のがん抗原特異的siTCR遺伝子治療の第I相臨床試験(医師主導治験)が国内で進められています。
siTCRベクター技術
T細胞が有する内在性TCR遺伝子の発現を抑制するためのsiRNA配列を組み込んだベクターを用いて、外部から人工的に導入した目的のTCR遺伝子を効率的に発現することができる技術です。副作用のリスクの低減、有効性の向上につながると考えられます。当社の独自技術です。