タカラバイオ株式会社は、iHeart Japan株式会社(以下、「iHeart社」)と、本年6月24日付けで、実施許諾及び技術移転契約を締結しましたので、お知らせいたします。
本契約の対象となる事業は、ヒトiPS細胞をはじめとする幹細胞から分化誘導された心筋細胞や血管系細胞を利用したリサーチ・ツール(以下、「本リサーチ・ツール」)の製造販売および本リサーチ・ツールを使用する受託サービスです。当社は、iHeart社が保有するこれらの事業に関する特許および技術ノウハウに関して、日本及びアジアにおいて独占的に実施する権利の許諾を受け、契約に基づき対価を支払います。
本リサーチ・ツールとして複数の製品が想定されておりますが、主力製品となることが期待されている製品は、医薬品候補物質がヒトに投与された時に不整脈などの副作用を起こすか否かを評価しようとするリサーチ・ツールです。現在も、製薬企業は、開発中の医薬品候補物質を臨床試験でヒトに投与する前に、試験管レベルと動物レベルの評価試験を行い、ヒトに投与しても安全であろうと判断した医薬品候補物質について臨床試験を進めています。しかしながら、ヒトと動物との種差などが原因で前臨床段階では有害反応を検出できない場合があり、ヒトに投与されて初めて有害反応が発見され、開発中止や販売中止に至るという事態が起きています。本リサーチ・ツールであれば、ヒトに投与した場合に起きる作用を高い精度で予測できると期待されており、動物実験や臨床試験の一部を試験管レベルの評価試験で代替できることにより、医薬品開発のコストとリスクを大幅に削減できると期待されています。
iHeart社は、国立大学法人京都大学iPS細胞研究所の山下潤教授の研究成果を産業に応用するために2013年に設立されたベンチャー企業で、iPS細胞などの多能性幹細胞から心血管系細胞への分化誘導技術が強みであると言えます。当社は、iHeart社より技術移転を受け、本リサーチ・ツールの製品販売・受託サービスを2年以内に開始する予定です。
なお、本契約締結による、当社連結及び単体の平成27年3月期業績への直接的な影響は軽微です。当社は、今後ともバイオ医薬品の創薬支援分野における新製品・サービスの開発により、更なる売上拡大を目指してまいります。
この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970
<参考資料>
【iHeart Japan株式会社の概要】
会社名 | : | iHeart Japan株式会社 |
設立 | : | 2013年 |
代表者 | : | 代表取締役社長 角田健治 |
住所 | : | 京都市左京区聖護院川原町53 京都大学メディカルイノベーションセンター |
会社概要 | : | 国立大学法人京都大学iPS細胞研究所の山下潤教授の研究成果を産業に応用するために2013年に設立されたベンチャー企業 |
ホームページ | : | http://www.iheartjapan.jp |
【語句説明】
iPS細胞
体細胞に、数種類の遺伝子を導入することなどによって分化多能性が誘導された幹細胞の一種です。2006年に京都大学山中伸弥教授らのグループにより、この現象が発見され人工多能性幹細胞(induced Pluripotent Stem Cells:iPS細胞)と名付けられました。iPS細胞は、ES(Embryonic Stem)細胞とほぼ同等の分化多能性を示すことから、新薬開発、疾患の病態解明や再生医療への応用が期待されています。
多能性幹細胞
種々の細胞へ分化できる能力(多分化能)と分裂増殖を経ても未分化な細胞を維持できる自己増殖能を有する細胞のことをいいます。例えば、再生医療への応用が期待されているヒト初期胚より樹立されたES細胞(Embryonic Stem Cells:胚性幹細胞)やヒト体細胞をリプログラミングして得られた人工多能性幹細胞(induced Pluripotent Stem Cells:iPS細胞)も含まれます。
心筋細胞
心臓を構成する筋肉細胞のことです。体細胞から心筋細胞を分化させることにより、再生医療への応用や、安全性試験などの創薬研究への利用が期待されています。
血管系細胞
血管内皮細胞、血管壁細胞など血管を構成する細胞のことです。体細胞から血管系細胞を分化させることにより、再生医療への応用や研究分野での利用が期待されます。