当社は、American Society of Clinical Oncology(米国臨床腫瘍学会)2016(本年6月3日~7日開催、米国・イリノイ州・シカゴ)において、腫瘍溶解性ウイルスHF10の米国での第II相臨床試験の中間結果を発表しますので、お知らせいたします。
 

【発表概要】

 

学会名 ASCO(American Society of Clinical Oncology) Annual Meeting 2016
場所 McCormick Place (シカゴ、イリノイ州、米国)
発表日時 6月4日(現地時間)
演題 Preliminary results from Phase II Study of Combination Treatment with HF10, a Replication-competent HSV-1 Oncolytic Virus, and Ipilimumab in Patients with Stage IIIB, IIIC, or IV Unresectable or Metastatic Melanoma
(切除不能または転移性メラノーマ患者に対する腫瘍溶解性ウイルスHF10とイピリムマブとの併用療法の第Ⅱ相臨床試験の中間報告)
発表要旨 腫瘍溶解性ウイルスHF10の米国での第II相臨床試験中間集計結果
【進捗状況】
・43例の組入れが完了し、評価可能例が37例となった。

 

【安全性について】
・HF10に起因するグレード3以上の有害事象は認められなかった。

・HF10との併用によるイピリムマブの副作用の増悪は認められなかった。

【有効性について】
・イピリムマブと腫瘍溶解性ウイルスHF10の併用治療は、イピリムマブ単独治療よりも効果があり、悪性黒色腫に対する新しい治療法になりうる可能性が示唆された。

 
 
なお、本中間集計結果について、7月28日より神戸市(神戸国際会議場)で行われる第14回日本臨床腫瘍学会学術集会において講演予定です。また、7月28日より東京都(虎の門ヒルズフォーラム)で開催される第22回日本遺伝子細胞治療学会においても発表いたします。
 
当社は、腫瘍溶解性ウイルスHF10について、現在、米国においてメラノーマを対象とした第II相臨床試験を、日本においては、メラノーマを対象とした第I相臨床試験を行っている他、膵臓がんを対象とした第Ⅰ/Ⅱ相試験を計画しております。平成30年度の商業化を目標に、引き続き臨床開発を推進してまいります。

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

 

【語句説明】

 

腫瘍溶解性ウイルスHF10

HF10は単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の弱毒化株で、がん局所に注入することによって顕著な抗腫瘍作用を示します。このようなウイルスは腫瘍溶解性ウイルス(oncolytic virus)と呼ばれています。当社はメラノーマを対象に米国で第II相臨床試験を、メラノーマなど固形がんを対象に日本で第I相臨床試験を行っています。
 

単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)

単純ヘルペスウイルス1型は、唇にできる口唇ヘルペス(口内炎)や、眼の角膜にできるびらん(単純ヘルペス角膜炎)などの原因となります。感染しても、多くの場合は症状をあらわすことなく体内に潜んでいますが、ストレス・過労・病気などの要因で体力が低下すると症状をあらわします。アシクロビルをはじめとした抗ウイルス剤が有効です。
 

腫瘍溶解性ウイルス

腫瘍溶解性ウイルスとは、正常な細胞内ではほとんど増殖せず、がん細胞内において特異的に増殖するウイルス(制限増殖型ウイルス)です。ウイルスの増殖によって直接的にがん細胞を破壊し、がん細胞が死滅します。また、その際に放出されたウイルスが周囲のがん細胞に感染し、さらに、破壊されたがん細胞の断片ががんに対する宿主の免疫を活性化することで、投与部位以外のがんも縮小することが期待されます。単純ヘルペスウイルス1型のほか、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、レオウイルス等から作られた腫瘍溶解性ウイルスの開発が行われています。
 

メラノーマ

悪性度が非常に高い、皮膚に発生するがんの一種で、悪性黒色腫とも呼ばれています。皮膚の色と関係するメラニン色素を産生する皮膚の細胞をメラノサイトと呼び、悪性黒色腫はこのメラノサイトあるいは母斑細胞(ほくろの細胞)が悪性化した腫瘍と考えられています。
 

副作用のグレード

副作用の重症度を示すものです。米国がん国立研究所が公表した基準では、グレード1~5の5段階に分類されています。グレード1~5の順に、軽度、中等度、高度、生命を脅かす重症度、死亡となります。グレード2以下は、症状に対して治療が必要になる可能性がありますが、臨床試験は継続できる程度とされています。