タカラバイオ株式会社は、再発または難治性急性リンパ性白血病(ALL)患者を対象としたキメラ抗原受容体(CAR: Chimeric Antigen Receptor)を用いた遺伝子治療(開発コード:TBI-1501)の第I/II相臨床試験を日本国内で実施するため、本日、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に再生医療等製品としての治験計画届を提出しましたのでお知らせいたします。
本試験では、成人ALL患者を対象とし、がん化したリンパ球の表面に発現するタンパク質であるCD19を認識するように開発したCAR(CD19・CAR)の遺伝子を被験者のリンパ球に体外で導入し、その遺伝子導入細胞を患者に投与した際の安全性や有効性等の評価を行います。また、本試験においては当社が開発したレトロネクチンsup{®}遺伝子導入法やレトロネクチンsup{®}拡大培養法、当社独自のCD19・CAR遺伝子導入用レトロウイルスベクターが使用されます。
今後、PMDAによる治験計画届の受理後、試験実施施設の治験審査委員会による審査を経て、被験者登録・投与を開始いたします。
当社は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)において再生医療等製品に適用される制度(条件及び期限付承認制度)などを活用してCD19・CAR遺伝子治療の早期承認を目指し、日本国内で平成32年度に商業化することを目標としています。
治験課題名 |
再発又は難治性のCD19陽性B細胞性急性リンパ芽球性白血病患者を対象としたTBI-1501の多施設共同第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験 |
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対象患者 |
再発又は難治性のCD19陽性B細胞性急性リンパ芽球性白血病患者 |
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主要評価項目 |
第I相臨床試験期 |
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目標症例数 |
21例(最大24例) |
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試験期間 |
平成29年3月~平成32年3月 |
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実施施設 |
自治医科大学他、全6施設 |
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この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970
CAR(キメラ抗原受容体)
CAR(Chimeric Antigen Receptor)は、あるがん抗原を特異的に認識するモノクローナル抗体由来の単鎖抗体(scFV)と、T細胞受容体の細胞質シグナル伝達ドメインであるCD3ζ鎖を遺伝子工学的に結合させて作製された、がん抗原を特異的に認識できる受容体です。
CD19
B細胞の表面に存在する糖蛋白で、B細胞の活性化や増殖に関与しています。また、慢性リンパ性白血病や急性リンパ性白血病などの多くのB細胞リンパ腫のB細胞表面にも発現しています。
B細胞
特定の抗原の刺激に応じて抗体産生を行う細胞で、Bリンパ球とも呼ばれます。B細胞の一部は、抗原の情報を記憶した細胞として体内に残るため、次に同じ抗原に感染した時にはすぐに抗体が産生されます。
急性リンパ性白血病
造血幹細胞からリンパ球に成熟する段階で異常が起こり、本来リンパ球になる細胞ががん化し急速に増える白血病です。
レトロウイルスベクター
レトロウイルスとは、一本鎖RNAをゲノムとするウイルスの一種で、このウイルスが感染した細胞では、RNAゲノムから合成されたDNAが染色体に組み込まれます。その仕組みを利用して、レトロウイルスを改変させたものが、遺伝子治療の際の遺伝子導入用ベクター(ウイルスベクター)として広く用いられます。
レトロネクチンsup{®}
レトロネクチンsup{®}は、当社が開発したヒトフィブロネクチンと呼ばれる分子を改良した組換えタンパク質です。レトロネクチンsup{®}を用いたレトロウイルスベクターによる遺伝子導入法は、レトロネクチンsup{®}遺伝子導入法として知られており、レトロウイルスベクターによる遺伝子治療の臨床研究のスタンダードとなっています。
レトロネクチン拡大培養法sup{®}
レトロネクチンsup{®}拡大培養法は、ヒトリンパ球の拡大培養の際に、インターロイキン2および抗CD3モノクローナル抗体に加え、レトロネクチンsup{®}を併用するものです。当社は、レトロネクチンsup{®}拡大培養法によって効率よくリンパ球を増殖させることができ、さらに得られた細胞集団に、生体内での生存能力が高く、抗原認識能も高いナイーブT細胞が多く含まれていることを確認しています。