タカラバイオ株式会社は、膵がんを対象とした腫瘍溶解性ウイルスHF10(開発コード:TBI-1401(HF10))の第I相臨床試験において、9月26日に、第1例目の被験者へHF10を投与しましたのでお知らせします。
 
 本試験では、切除不能進行膵がんを対象とし、HF10と既存の化学療法剤を併用した際の安全性などの評価を行います。また、本試験では、当社遺伝子・細胞プロセッシングセンター(滋賀県草津市)にて製造したHF10製剤(治験製品)を使用しております。
 
 腫瘍溶解性ウイルスHF10の国内の開発及び販売に関しては、大塚製薬株式会社と独占的ライセンス契約を締結しており、両社で協議を重ね、国内におけるHF10の早期承認取得を目指し、引き続き臨床開発を推進してまいります。
 
 
<ご参考>
「膵がんを対象とした腫瘍溶解性ウイルスHF10の国内第I相臨床試験 治験計画届提出のお知らせ」
(平成29年6月1日当社リリース)

https://www.takara-bio.co.jp/ja/news/news8938199359078892040.html

この件に関するお問い合わせ先 : タカラバイオ株式会社 広報・IR部
Tel 077-565-6970

<参考資料>

【語句説明】

腫瘍溶解性ウイルス

腫瘍溶解性ウイルスとは、正常な細胞内ではほとんど増殖せず、がん細胞内において特異的に増殖するウイルス(制限増殖型ウイルス)です。増殖によって直接的にがん細胞を破壊し、さらにその際に放出されたウイルスが周囲のがん細胞に感染すること、また、破壊されたがん細胞の断片ががんに対する宿主の免疫を活性化することで、投与部位以外のがんも縮小することが期待されます。単純ヘルペスウイルス1型のほか、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、レオウイルス等から作られた腫瘍溶解性ウイルスの開発が行われています。

 

HF10

HF10は単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の弱毒化株で、がん局所に注入することによって顕著な抗腫瘍作用を示します。このようなウイルスは腫瘍溶解性ウイルス(oncolytic virus)と呼ばれています。また、平成28年12月に大塚製薬株式会社とHF10に関する国内独占的ライセンス契約を締結しました。

 

単純ヘルペスウイルス1型

単純ヘルペスウイルス1型は、唇にできる口唇ヘルペス(口内炎)や、眼の角膜にできるびらん(単純ヘルペス角膜炎)などの原因となります。感染しても、多くの場合は症状をあらわすことなく体内に潜んでいますが、ストレス・過労・病気などの要因で体力が低下すると症状をあらわします。アシクロビルをはじめとした抗ウイルス剤が治療薬として有効です。

 

遺伝子・細胞プロセッシングセンター

当社の遺伝子治療プロジェクトの治験薬を製造する他、再生医療等製品の開発製造支援事業(CDMO事業)の拠点として、2014年10月に稼働しました。当施設は、医薬品や再生医療等製品の製造・品質管理基準(GMP/GCTP)に準拠した製造施設で、2015年5月には再生医療等安全確保法による特定細胞加工物製造許可を取得したほか、国際製薬技術協会(ISPE)の2016年ファシリティー・オブ・ザ・イヤーのファシリティー・インテグレーション部門賞を受賞するなど、再生医療等製品を安全かつ効率的に製造できる施設として評価されています。